Bills, Bills, Bills
私の好きな小説家の1人である山田詠美は
小説「PAY DAY!!!」をこんな言葉で締めくくっている。
「太陽はまだ高いところにあり、日は当分暮れそうにない。
少なくとも、給料日には幸せになれる。
そんな人生が、たった今、始まったばかりだ。」
そう、明日は弊社の給料日、そして私の人生初のボーナス支給日。
大学を卒業してから4年、職と就業形態を転々としてきた私の、
社会人3年目(わお、同年代より3年出遅れている)にして
待望の人生初めてのボーナスが支給される日…のはずだった。
給料日はいつもと同じように、額は休んだ分だけ減っているが、来る。
それはネットバンキング担当の私が自分の給与を振り込んだから知っている。
(もうそれも引き継がれて来月からはドキドキするのだけれど)
昇給の時のような面談もなく、明細は一向に部長から来ない。
夕方自宅(地方)に帰ろうとしている社長を捕まえ聞いてみると
「うーん、協議中!」とこちらの目を見ないままいそいそと退社した。
その瞬間、やる気スイッチが切れたことが自分でもわかった。
まず真っ直ぐ座ってられなくなり、椅子からずり落ちそうになった。
定時まで残り一時間切った仕事も手は動いているが、脳が内容を理解していない。
部長が老害に向かって会社の売上がどうのこうのと世間話をしているが、
社長が入社の時に会社が赤字でも賞与は出すと言い切った姿を思い出し、
うそつきうそつきうそつき、とマスクの中で繰り返した。
部長が接待で帰ったあと、即電話をかけ心療内科を予約し、
土曜日の美容院を連休最終日に延期し、うそつき、とまたつぶやいた。
18:30になった瞬間またもや即PCをシャットダウンし、
心療内科に駆け込み、診察時間の時間まで長いソファーで伸びて寝ていた。
本当は前職のお姉さんたちとご飯だったのに、
ソファーから長文のだめにんげんですいませんいけませんLINEを送り、
お姉さんの優しさに診察前からすでに泣きながら診察室に入った。
待ちながら何をすれば一番の復讐になるだろうと考えた結果
「働くこと」に決めた。体力が続く限り働いてしっかり残業代を請求しよう。
この事実を隠していた部長も共犯に認定し、
売上がないことが賞与が出ない理由なら、売上上げるために
私明日終電まで仕事します、あと週末も両日終日出ます、とLINEで部長に宣言した。
幸い仕事なら新規開拓というタスクが無制限にある。
診察室ではもうばかみたいに泣いてしまい、先生は困っていた。
明日出ないのは百歩譲って許すとして、逃げるって最低じゃないですか?
だから私働いて働いて、絶対倒れないでボーナス分稼ぎます、
とめそめそする私に先生はまあまあ落ち着いて、と新しいお薬を出してくれた。
この内服液、めちゃくちゃ不味くて家帰って飲んだら我に返った。
そしてさっき、部長に送ったLINEの返信が負けないくらい長文できた。
ざっくり要約すると
会社にお金がないのだから仕方がない、社長は交渉している(誰にだよ)
病気で休んでいる人間が賞与についてガタガタ言うな、
弊社はブラック企業じゃないんだから無制限の残業は認めない。
キレた。
特に2文目にキレた。その会社のせいで鬱状態になったんだろうが。
むかついたから伝染しない病気じゃない限り這ってでも会社に行くことにした。
部長の顔も見たくないくらいむかついている。
今月は怒りを原動力に仕事をしようと決意した、給料日前夜。